MENU

相続・遺言に関する知識knowledge

>
第1章 遺産分割とは

第1章 遺産分割とは

共同相続の場合 、相続財産は、各人の相続分にしたがって複数の相続人に共同帰属しています(民法898条)。遺産分割とは、被相続人が死亡時に有していたそれらの相続財産(遺産)について、どの遺産を誰が取得するかを確定させる手続です。

1 遺産分割の対象

遺産分割において対象となる財産は
①相続開始時に存在し
②分割時にも存在する
遺産とされています。

「相続開始時に存在する」というのは、被相続人が死亡した時点において現存していた財産しか遺産分割の対象とならないという意味です。
たとえば、相続開始前に被相続人自らの意思で費消した財産はもちろん、相続人や第三者が勝手に引き出した預貯金等も、被相続人死亡時点においては、被相続人名義の遺産としては存在しないわけですから,当該預貯金そのものは遺産分割の対象とはなりません。その場合は、相続人や第三者の引き出しにより,被相続人が当該相続人等に対する不当利得返還請求権,損害賠償請求権を有していることになりますから、それらの請求権が遺産ということになります。そして、当該相続人らが無断引き出しを争った場合(たとえば、被相続人から依頼されて引き出し、贈与を受けたものである等)には、遺産分割の前提問題として民事訴訟において決着をつけなければならないことになります。

次に「遺産分割時に存在する」というのは,相続開始時点においては存在したものの、その後何らかの理由によって遺産分割時には存在しなくなってしまった財産は、遺産分割の対象にはならない、という意味です。
たとえば、相続開始後に共同相続人の一部が無断で遺産を費消してしまった場合や、相続人の合意によって遺産に属する不動産を売却した場合などがこれに当たります。それらの場合、無断処分者に対する損害賠償請求権や、不動産売却代金は、遺産の代償物ではありますが、遺産そのものではありませんから、遺産分割の対象となりません。
この点について詳しくは、関連する法律相談「不動産を売却した遺産の代金は遺産分割の対象となるか」をご参照ください。

なお、相続開始時に存在しない、あるいは相続開始時には存在したが、その後に存在しなくなってしまった財産いずれも、当事者全員の同意があれば遺産分割の対象にすることは可能です。

2 遺産分割の手続

遺産分割の手続には4つあります。
(1)遺言による指定分割
(2)協議による分割
(3)調停による分割
(4)審判による分割
です。

(1)遺言による指定分割

遺言による指定分割とは、被相続人が作成した遺言にしたがって相続財産を分割する方法です(民法908)。

(2)協議による分割

協議による分割とは、相続人全員の合意により遺産を分割する手続です(民法907I)。全員の合意があれば原則としてどのような分割も可能であり、例えば、特定の相続人が不動産を取得する代わりに他の相続人にお金を支払うとか(代償分割)、遺産を売却して相続人全員で法定相続分どおり分ける(換価分割)ことも可能です。

また、遺言があっても、遺言執行者がいない場合には、相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることも可能と考えられています。

関連する法律相談

 

(3)調停による分割
ア 概要

分割協議がまとまらないときには、各相続人は、家庭裁判所に遺産分割を請求することが出来ます(民法907II)。法律上は、離婚と異なり、調停を申し立てずにいきなり審判を申し立てることが出来ます(家事審判法18条)が、通常は調停を申し立てることが圧倒的に多いと言われています。
いきなり審判を申し立てたとしても,まずは話し合いをする必要があると言うことで,裁判所の判断で調停に付されることがほとんどです。
調停手続においては、調停委員の立ち会いの下、当事者間で合理的な解決方法について協議を行うことになります。調停が成立すれば問題ありませんが、仮に協議をしても当事者間の意見が一致しない場合、調停手続は不成立となります。調停はあくまで「話し合い」をベースにした手続だからです。
そして,調停が成立した場合には,その内容を書面にした「調停調書」が作成されることになりますが,この「調停調書」には確定した審判と同じ効力がある,つまりこの「調停調書」によって強制執行をすることが可能となっています。

イ 管轄

遺産分割調停はどこの家庭裁判所に申立てることが出来るのでしょうか。これが「土地管轄」の問題です。調停事件の土地管轄は、相手方の住所地,または当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事審判規則129I)。
遺産分割事件においては,相手方が遠隔地に居住していることも多く,その場合,調停を申し立てた上で手続を進めること自体に非常に手間暇がかかることがあります。

(4)審判による分割

遺産分割調停が不成立となった場合、自動的に審判手続きに移行します(家事審判法26条)。

審判手続は調停手続とは異なり、裁判官が双方からの事情を聞いたり、資料を基にして白黒決着をつける手続です。その意味で、普通の裁判に近い手続と言えるかもしれません。

3 遺産分割の方法

遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類があります。
現物分割とは、遺産を実際に分けて分配する方法です。預貯金や株式,現金等分割可能なものについてはこの方法をとることになります。
代償分割とは、不動産など、遺産の中に分割ができないものが含まれている場合に、当該遺産を取得する相続人が、その引き替えに(その代償として)、他の相続人に代償金を支払うという分割方法です。
換価分割とは、遺産を全てお金に換えた上で、その換価代金を現実に分割するという分割方法です。
共有分割とは、不動産等分割ができない遺産について、相続人間の共有にするという分割方法です

相続・遺言に関する知識 一覧