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相続・遺言に関する知識knowledge

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第2章 相続人の確定

第2章 相続人の確定


1 被相続人の身分関係の調査(相続人の調査)

この点は要するに、相続人が何人いて、それぞれの法定相続分はどの程度か、という問題です。

依頼者の方がご存じないだけで、実は相続人が他にもいた、というケースは枚挙に暇がありません。万が一法定相続人を除外して遺産分割協議を行った場合、当該遺産分割協議は無効になりますので、相続人の調査は慎重に行う必要があります。

具体的には、被相続人の除籍謄本から始まって、相続人が存在しないかどうか、戸籍謄本を遡っていくことになります。まずは、被相続人の子供がいないかどうかを確認するために、被相続人が15歳くらいの戸籍まで遡っていかなければなりませんし、場合によっては甥や姪が相続人となるケースもありますので、調査の範囲が相当広範囲になることも少なくありません。また、戸籍の調査とあわせて各相続人の現在の住所も確認する必要があるので、戸籍の付票を取得する必要があります。

2 相続人の順位、法定相続分

遺言がない場合の各相続人の相続分は民法に定めるところによります。
これを法定相続分といいます。また、この法定相続分を、特別受益や寄与分を考慮して修正したものが具体的相続分となります。したがって、特別受益や寄与分がなければ法定相続分どおりの相続分となりますし(この場合には法定相続分=具体的相続分ということになります)、これらが存在すれば、それを考慮して(その考慮の仕方は後述します)具体的相続分が定まることになります。

(1) 相続人の順位
ア 第1順位

被相続人の子がいれば、その子が第1順位の相続人となります。胎児であっても相続人になりますし、嫡出児、非嫡出児も問いません。

イ 第2順位

被相続人に子ないし代襲者がいない場合には、直系尊属(被相続人の親など)が相続人となります。

ウ 第3順位

第1順位、第2順位の相続人がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。

エ 配偶者

被相続人の配偶者は、ア~ウの順位で決まる相続人と常に同順位で相続人になります。

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(2)法定相続分
1)子と配偶者が相続人である場合(法900条1号、4号)

子:配偶者=1:1
となります。
ただし、昭和55年の民法改正(昭和56年1月1日施行)前は
子:配偶者=2:1
でした。したがって、被相続人の死亡が昭和55年12月31日以前の場合には法定相続分は、「子:配偶者=2:1」となります。

2)配偶者と直系尊属が相続人である場合(法900条2項)

直系尊属:配偶者=1:2
となります。
ただし、前述と同じ理由から、被相続人の死亡が昭和55年12月31日以前の場合には法定相続分は、
直系尊属:配偶者=1:1
となります。

3)配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合(法900条3項)

兄弟姉妹:配偶者=1:3
となります。
ただし、前述と同じ理由から、被相続人の死亡が昭和55年12月31日以前の場合には法定相続分は、
兄弟姉妹:配偶者=1:2
となります。

(3)代襲相続

相続開始前に相続人の子が死亡等しているときは、その者の子がさらに相続人になります。これを代襲相続と言います。
代襲相続のポイントは以下のとおりです。
・相続放棄は代襲原因となりません。
・相続開始前に代襲者が死亡していても、当該代襲者に子があれば、その子が相続人となります(再代襲)。
・兄弟姉妹の子、すなわち甥姪は代襲相続人になりますが、さらにその甥姪の子は再代襲をしません。

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3 相続人の地位が争われる場合

遺産分割の前段階において、相続人の地位が争われる場合があります。

例えば、戸籍上は子供として記載されている者がいるが、その者が実際には被相続人と親子関係がない、と主張する者がいる場合や、養子縁組をしたことになっているが、当該養子縁組を無効と主張する者がいる場合です。

相続人の地位については,遺産分割の前に解決・確定しなければならない問題(「前提問題」といいます)ですので,この点について争いがある場合には,まず相続人の地位について審判ないし人事訴訟において確定する必要があります。

遺産分割調停事件係属中にその点について争いが生じた場合には,調停事件をそのまま進行させずに,審判ないし人事訴訟による解決をするように裁判所からは促されます。

4 相続人の行方不明

共同相続人の一部について、生きていることは明らかだがその行方がわからない場合にはどうしたらよいのでしょうか。

このような場合には、当該行方不明の相続人を不在者として、「不在者の財産管理人」(民法25条I)の選任を求めることができます。当該財産管理人が選任された以降は、財産管理人を交えて遺産分割手続を進めることになります。

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