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いわゆる「相続させる遺言」をした遺言者より先に、その名宛人である相続人が死亡した場合、代襲相続が発生しますか

いわゆる「相続させる遺言」をした遺言者より先に、その名宛人である相続人が死亡した場合、代襲相続が発生しますか

Q

私の祖父は、生前私の父に対して「その所有する土地全てを相続させる」旨の遺言を作成していました。しかし、私の父は祖父が存命中に死亡してしまい、その後を追うように祖父が死亡しました。私は祖父が残した遺言にしたがって、祖父が所有していた土地を相続することができるのでしょうか。

A

あなたのお祖父様が残した遺言は、いわゆる「相続させる遺言」と言われるものです。この「相続させる遺言」は、判例上原則として遺産分割の方法が指定されたものとされています(最高裁平成3年4月19日判決・民集45巻4号477頁)。

本件での問題は、この「相続させる遺言」がされたケースにおいて、先にその遺言の名宛人が死亡し、代襲相続が発生した場合に、代襲相続人であるあなたがその遺言にしたがって代襲相続できるか、という点です。
相続人(父)が、被相続人(祖父)が亡くなる前に死亡したとき、その相続人の子(私)が、亡くなった人(父)に代わって相続人となります。これを代襲相続と言います(民法887条2項、3項、889条)。
ちなみに、遺贈の場合には、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じないことが法律上定められています(民法994条1項)。
この点については、従前肯定した裁判例と否定した裁判例があり、下級審の判断が分かれていましたが、平成23年2月22日最高裁判決によって決着がつきました。

この判決は、「上記のような『相続させる』旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるも のとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及 び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特 段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」としています。

そして、その理由としては、「『相続させる』旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される」としています。
この判決は、「相続させる」遺言を、特定の受贈者に対する特定遺贈と同様にとらえ、遺贈において受贈者が先に死亡した場合(この場合は先述のように遺贈は無効となることが法律上定められています)とほぼパラレルに考えているのではないかと思われます。
したがいまして、本件においてあなたがお祖父様の遺言にしたがって不動産を相続できるかどうかは「当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記 載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させ る旨の意思を有していたとみるべき特段の事情」があるか否か、にかかってくることになります。
たとえば、あなたのお父さんが長男でお祖父様の事業を承継し、あなた自身も当該事業の後継者と目され、当該不動産が事業に不可欠である、お祖父様は生前か らあなたのお父さんやあなたに対して、当該不動産を事業承継者に継承させるつもりであると伝えていた、などの事情がある場合にはこの「特段の事情」がある とされることもあり得ると思います。ただし、このような事情が無い場合には、あなたは当該遺言によって当該不動産を取得することは出来ない、ということに なるでしょう。

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