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相続・遺言に関する知識knowledge

第8章 遺言

1 遺言とは

遺言は、遺言者の最終的な意思を表したものです。
個人や法人の意思を表した書面には多種多様なものがあります。
たとえば、契約書もそうですし、何らかの通知文書、手紙、メモなどもそのような書面と言えます。

しかし、遺言の場合、それらの書面とは決定的に異なる点があります。

それは、遺言は、それが効力を発生したときには遺言者本人は存在しないため、その真意を直接確認することが不可能であること、また他人による偽造の可能性も高い、という点です。

そこで、法律上,遺言は一定の厳格な方式にしたがって作成されなければならず、その方式を欠く場合には無効であると定めています(民法960条)。

2 遺言の種類

遺産分割の手続には4つあります。

(1)普通方式

これは、死期が迫っているとか一般社会から隔離されているといった特別な状況の時に作成される「特別方式」の遺言ではない遺言です。

1)自筆証書遺言
2)公正証書遺言
3)秘密証書遺言

の3種類に分かれます。簡単に説明します。

1)自筆証書遺言
遺言者本人が、遺言の内容の全文、日付、氏名を全て自分で記載し署名の下に捺印する方式です。作成に特別な手間がかからず、かつ遺言内容についても秘密を保つことが出来ますが、逆に形式を欠いたために無効になる危険性や、偽造・変造がなされる危険性、また遺言の存在が知られずに遺産分割がなされてしまう危険性もあります。

(ア)日付の記載
日付の記載が必要とされているのは、遺言作成能力を確認するには日付が特定されている必要があることや、複数の遺言がある場合の遺言作成日の前後関係を判断する必要性などによります。

I 日付も自書する必要があり、ゴム印などによる記入は日付がないと判断されます。
II 明らかな誤記についても日付の特定が可能であれば無効とはされません(裁判例にあらわれたものとしては「昭和」を「正和」、「昭和五拾四年」を「昭和五拾四拾年」と記載したものについて、いずれも明らかな誤記であり日付として認めています。)。
III 日付の記載によって年月日が特定されなければなりません。年月のみで日が記載されていない遺言、「昭和41年7月吉日」と記載された遺言は日付の記載を欠き無効とされた裁判例があります。

(イ)氏名の自署(署名)
署名については、遺言者の同一性が確認出来れば通称などでも足りるとされています。

(ウ)押印
最近は各種文書の作成に必ずしも押印が必要ない場合も多くなっていますが、遺言は遺言者の財産処分等を伴う重要な文書であることや、我が国において押印によって意思表示が完成するという意識が依然として根強いことなどから、民法は押印を必要としています。ただし、以下のように、押印の態様については解釈によって厳格性が緩和されています。

I 押印を欠く遺言は無効ですが、押印として用いる印は実印に限らず、認め印でも構いません。
II 指印による遺言が有効か無効かについて、裁判例は分かれていましたが、最高裁判所は「いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがない」として、有効としました(最判平成元年2月16日、最判平成元年6月20日)。

2) 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人の面前で遺言者が遺言の内容を説明し、その内容を公証人が遺言書にまとめるものです。公証人という第三者が作成するので、形式不備の可能性はまずありませんし、原本をほぼ永久に保管してくれるというメリットがあります。その反面、公正証書遺言の作成には証人2人が立ち会う必要がありますので、遺言の内容が漏れてしまうという危険性はあります。

3) 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、(1)と(2)の方式をミックスしたものです。
遺言者が遺言の内容を書面に記載した上で、同書面を封筒に入れて封印し、同封書を公証人に提出して自己の遺言書である旨並に書面を筆記した者の氏名、住所を述べる、というものです。
遺言内容を秘匿することは出来ますが、書面記載の加除、訂正に厳格な方式が要求されているので、公正証書遺言と異なり、無効になる危険性も0ではありません。

(2)特別方式
民法は、遺言者が普通の状態にあるときの方式として普通方式による遺言を定めていますが、病気で危篤の状態にあるとか、一般社会から隔離されていて普通方式による遺言が出来ない場合について、特別方式による遺言を認めています。この特別方式による遺言には、

1)一般危急時遺言
2)離船危急時遺言
3)一般隔絶地遺言

がありますが、利用されるケースは極めて限定的ですので、説明は割愛します。

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