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財団法人の死亡退職金は遺産にあたるのか

財団法人の死亡退職金は遺産にあたるのか

Q

私の夫はある財団法人の理事長を務めていましたが、今般亡くなりました。
その結果、同財団法人が私に対して死亡退職金として2000万円を支給するという決定をしてくれましたが、子供らが、この退職金は遺産だから、相続分に従って分配するように、と言ってきています。どうしたらいいのでしょうか。
なお、この財団法人には死亡退職金に関する支給規定はありません。

A

最判昭和62年3月3日をベースにした設問です。

この裁判では、1審と2審での判断が分かれました。1審は、相続人の1人である妻は、遺族の代表として死亡退職金を支給されたものと解すべきであるから右退熾金を共有持分に応じて分割すべきであるとして、子供らの請求を認容しました。
これに対し、2審は、右死亡退職金は相続という立場を離れて配偶者であった妻個人に対して支給されたものであるとして、子供らの請求を棄却した。
そして、最高裁は、 「死亡退職金の支給規程のない財団法人において理事長の死亡後同人の妻に支給する旨の決定をして支払われた死亡退職金は、特段の事情のない限り、相続財産 に属するものではなく、妻個人に属するものと認めるべきものとした原審の認定判断は相当である。」としました。
そもそも、死亡退職金が相続財産にあたるか否かについては争いのあるところです。

[1] 死亡退職金の支給基準、受給権者の範囲、順序が法令や就業規則等で定められている場合
この場合は、判例、通説共に受給権者の固有の権利であり、相続財産ではない、としています(最1小判昭55・11・27等)。ただし、相続財産ではないとしても、特別受益にあたるか否かについては争いがあります。

[2] 死亡退職金の支給につき全く規程がない場合
この場合、判例、学説共に、相続財産に属さないとする見解と相続財産となるとする見解が対立しており、決着を見ていません。

なお、本件は死亡退職金の支給規定がないものの、支給決定がなされた事案ですので、[2]のケースではなくむしろ[1]のケースに近いと言えますが、死亡 退職金につき相続財産性を否定する前記最高裁の判例の流れの中にあるものと位置づけることができる、とも解説されています。

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