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遺留分算定の基礎から寄与分は控除されますか

遺留分算定の基礎から寄与分は控除されますか

Q

私の父は先日死去しました。母が既に他界しているため、相続人は、私と私の姉と弟の3名のみです。

父は生前に公正証書遺言を残していました。その内容は、父の財産全部を私に遺贈するというものでした。

父の遺産は、父が住んでいた家と敷地と、畑10筆と田8筆で、父はそれらの田畑で農業を営んでおりました。私は若いうちから長男として父の後を継ぐようにと言われており父と共に懸命に働いてきました。

しかし、姉と弟は、早速私に対して、「自分たちには遺留分があるからその分については渡すように」と遺留分減殺請求訴訟を提起してきました。

遺留分は法律上認められた当然の権利ですので、姉や弟に対して真摯に対応するつもりでおります。

しかし、私は家業である農業を父とともに行ってきたのであり、私が必死に頑張ったからこそ、畑や田といった農地を父は手放すことなく守り続けることができたのです。

したがって、父は私の功績を認め、それに報いる趣旨で私に全財産を遺贈する遺言を残したのであって、姉や弟が農地に対して遺留分の権利を主張するのは納得がいきません。

私は裁判で、「姉や弟の遺留分は、農地を除いた遺産部分についてしか認められない」と反論できないでしょうか。

A

(1)寄与分と特別受益
あなたの主張は、法律上「寄与分」と呼ばれるものです(民法904条の2第1項)。
寄与分とは、法定相続分に基づいて相続人の具体的相続分を算定する際に相続人間の公平を図るために認められたものです。被相続人の財産の維持又は増加につ いて特別の寄与をした場合に、被相続人が相続開始時において有した財産の価額から寄与分の額を控除した額を相続財産とみなします。
なお、反対に、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた場合(これを法律上「特別受益」といいます)には、被相続人が相続開始時において有した財産の価額にその生前贈与や遺贈の額を加算した額を相続財産とみなします(民法903条第1項)。

(2)遺留分が問題となる場合
このように、法定相続分に基づいて遺産分割を行うのではなく、遺言や生前贈与がなされた場合に、遺留分の算定をする際に基礎となる財産の価額は、法律上、 被相続人が相続開始の時において有していた価額に特別受益の価額を加算したものとされていますが(民法1029条1項)、寄与分を控除するという規定はありません。
したがって、相続財産について特別の寄与をした者が被相続人から遺贈を受けた場合に、遺留分減殺請求訴訟において寄与分を主張することはできないとするの が通説の見解です。実質的に見ても、特別の寄与をしたからこそ、その人は被相続人から遺贈を受けたと考えられているのでしょう。
ですので、遺留分減殺請求訴訟が提起された場合、訴訟を提起された者(被告)は、訴訟手続の中で寄与分があると反論することはできません。寄与分は共同相 続人間の協議が調わないとき又は協議をすることができないときに家庭裁判所の審判により定められるもので(民法904条の2第4項)、訴訟ではなく、家事 審判で決まるものだからです(東京高決平成3年7月30日判タ565号280頁)。

(3)本件
以上より、民法上寄与分を遺留分算定の基礎から控除する規定はありませんし、訴訟手続で寄与分があると反論することもできません。したがって、本件におい ても、あなたは、お姉さんや弟さんから起こされている遺留分減殺請求訴訟の中で、お父さんの遺産からあなたの寄与分を控除した額を遺留分減殺請求における 算定の基礎にして欲しいと反論することはできないこととなります。

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