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自筆証書遺言を発見した場合,どうすればよいか

自筆証書遺言を発見した場合,どうすればよいか

Q

母が亡くなり,姉と私の2名が相続人です。葬式のあと,母のタンスから遺言書らしき封筒が出てきましたが,どう取り扱えばよいですか。また,姉がそもそも遺言書かどうかわからないからとりあえず封を開けて確認しようというのですが,仮に遺言書だった場合,勝手に開封すると無効になるのでしょうか。

A

1 遺言を発見した場合の処理
 遺言とは遺言者の最後の意思表示であり,できるだけ尊重すべきである一方,常に偽造・変造の危険がつきまとうものでもあります。そこで,法は,遺言制度の適正な運用と後日の紛争防止のため,遺言書の現状保全手続として家庭裁判所による遺言の「検認」手続きを用意しました。すなわち,遺言の保管者が遺言者の相続開始(遺言者の死亡)を知った場合,及び,相続開始以降に遺言を発見した相続人は,遅滞なく家庭裁判所に提出し遺言の検認を求めなければなりません(民法1004条1項)。遺言保管者や遺言発見者が遺言の検認を申し立てない場合は,過料5万円が課されます(民法1005条)。なお,公正証書遺言は,原本が公正役場に保管されるため偽造・変造のおそれがなく検認の必要はありません(民法1004条2項)。
 発見された遺言書に封印がなされている場合,家庭裁判所にて相続人またはその代理人の立会がなければ開封できず(民法1004条3項),家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封した者は5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。実務上,この開封手続きは検認手続きの中で行われています。

2 検認の目的・意味 
検認とは,上記のとおり遺言書の偽造,変造を防止するための検証・証拠保全を目的とする手続ですから検認を受けたからといって遺言書が有効となるものではなく(大判昭和3・2・22新聞2840・15),遺言の有効無効はあくまで遺言自体の形式や内容によって定まります。したがって,遺言が無効であると主張する場合には,遺言の検認を受けた後に遺言無効確認の訴えを提起する必要があります。

3 ご質問について
 母の遺言を発見した相続人である娘は,父の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所に対し遺言の検認を申し立て,検認手続の中で遺言が開封されることになります。
なお,家庭裁判所外で遺言を開封しても,それによって遺言が無効になるわけではなく,検認を受けずとも法定の要式を満たしていれば遺言の効力に影響はありません。もっとも,事後の紛争予防のため,検認を申し立て,家庭裁判所に開封してもらうほうが望ましいでしょう。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク『実務解説遺言執行』日本加除出版

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