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離婚の財産分与請求権は相続できるか

離婚の財産分与請求権は相続できるか

Q

私の両親は1年前に協議離婚し,離婚直後,母が父に財産分与を求める調停を起こしました。調停では,父が財産分与として母に2千万円を支払うとの内容で双方が合意し,次回の期日で調停成立予定だったところ,母は,次回調停の前日に交通事故で死亡しました。母の相続人は一人娘の私だけです。私は,母の相続人として父に対し母の離婚に関する財産分与を請求できますか。

A

1 財産分与請求権
 財産分与請求権とは,離婚に際して夫婦が婚姻中に共同で形成した財産の清算を目的に,夫婦間で財産給付を請求し得る権利です。

2 財産分与請求権の相続の可否
(1)財産分与請求権の相続と時期的問題
 財産分与請求権は離婚によって初めて発生する権利ですので,生前に離婚を前提に財産分与を求めていたとしても,離婚前に死亡した場合には相続の対象となりません。
 相続開始時に離婚が成立していた場合の財産分与請求権の相続の可否については,協議や調停・審判等(以下「協議等」といいます)で具体的な金額が確定している場合に限って相続の対象となるという立場,被相続人が生前に財産分与の意思表示を行っていれば協議等の成立前であっても相続の対象となるという立場,そして,財産分与請求権は離婚に伴って当然発生する権利であるから生前に請求の意思表示を行っていなくても相続の対象となるという立場とがあります。
この点に関する最高裁判例はありませんが,下級審では,少なくとも生前に財産分与の意思表示を行っていれば協議等の途中であっても相続の対象になるという高裁決定(名古屋高決昭和27・7・3高民集5・6・265)や,生前の財産分与の意思表示がなくとも相続の対象となるという地裁判決(大分地裁判昭和62・7・14。財産分与義務の相続の可否が問題となった事案)等があります。こうした流れを踏まえ,実務においては,協議等の成立前であっても相続の対象となるという立場が有力です。
(2)財産分与の3つの要素と扶養的財産分与の相続の可否
 財産分与には①婚姻中に築いた財産の清算,②離婚に伴う精神的苦痛の慰藉,③離婚後の生活扶養の3つの要素から成り立っています。このうち,③離婚後の生活扶養は,請求者が死亡した場合には不要となることから相続性を否定する立場が一般的です。

3 ご質問について
 問いの事情では,母が離婚後に死亡し,かつ,財産分与を求めて調停を申し立て具体的な金額が当事者間で合意に至っています。したがって,上記の下級審裁判例に従えば財産分与請求権は相続の対象となります。
もっとも,合意額である2千万円には離婚後の生活扶養的要素部分が含まれていると思われますので,その部分については減額される可能性があります。
なお,財産分与請求権は離婚成立から2年以内に請求しなければ消滅します(除籍期間。民法768条2項但書)。ご質問のケースでは離婚から既に1年以上経過していますので注意が必要です。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
高岡信男『相続・遺言の法律相談』学陽書房
東京弁護士会相続・遺言研究部『Q&A相続・遺言110番第3版』民事法研究会

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