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賃借権を相続する場合

賃借権を相続する場合

Q

賃貸借契約の借主が死亡した場合について質問します。
別居していた両親が相い次いで亡くなり,息子二人が相続人です。父は自分で借りたマンションに,母は自分名義で借りた市営住宅に,それぞれ独居していました。借り手の死亡により,これらの賃貸借契約はどうなりますか。

A

1 賃借権は相続の対象か
 被相続人が相続開始時に有していた財産的権利義務は,被相続人の一身に専属するものを除いてすべて相続の対象となり,相続開始により相続人に承継されます(民法896条)。 
不動産賃借権は,借主の死亡により消滅せず,財産的上の権利であること,一身相続性もないことから相続の対象となります。そして,不動産賃借権は不可分債権(性質上分割できない債権)ですので,相続開始により共同相続人による準共有状態となり遺産分割協議を経て特定の相続人の帰属に至ります。

2 民間賃貸借契約の解除
 借主であった被相続人の死亡により賃借権は共同相続人である子二人の準共有となっています。仮に,子が賃借権を取得したい場合にはその旨の遺産分割協議を行い賃貸人に知らせます。相続による賃借権の承継に賃貸人の承諾は不要であり,賃貸人は相続による賃借人の変動に異議を述べることはできません。
他方,父の死亡により賃貸借契約を終了させたい場合は,準共有者である相続人全員,つまり子両名で解約を申し出る必要があります(最判昭和36・12・22民集15・12・2893判タ127・48)。

3 公営住宅の場合
公営住宅は,住宅困窮者への低廉家賃住宅の提供目的のもと入居条件が明確に定められていることから,判例上,公営住宅の使用権は当然には相続人に承継されません。このように公営住宅は,民間住宅とは取り扱いが異なりますので注意が必要です(最判平成2・10・18民集44・7・1021)。
 具体的には,各自治体が賃借人が死亡した場合の取り扱い詳細を定めていますので,問い合わせのうえ,指示に従って手続きを進める必要があります。

「参考文献」
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
安達敏男・浦岡由美子・國塚道和『Q&A相続・遺留分の法律と実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院

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