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お墓と仏壇の管理について揉めた場合にはどうしたらよいですか

お墓と仏壇の管理について揉めた場合にはどうしたらよいですか

Q

兄が亡くなり,妹の私が唯一の相続人です。
兄は,先祖代々の墓や仏壇を大事にしてきましたが,私は外国人の夫とアメリカで暮らしており,高齢のうえ日本に帰る予定もなく,墓や仏壇の管理はできそうにありません。
ところが,兄の遺品整理の際に,私を祭祀主宰者に指定する遺言が出てきたのです。
私は,今後,墓や仏壇を管理したり法要をしなければなりませんか。

A

1 祭祀主宰者とは
祭祀財産とは,系譜(系図),祭具(位牌,仏壇等),墳墓(墓石,墓地)を指します。祭祀財産の所有権は相続の対象とはならず,祭祀主宰者に引き継がれると定められています(民法897条1項本文)。
祭祀主宰者は,まずは,被相続人の指定(生前指定,遺言による指定も可能)によって定まり,被相続人の指定がない場合には慣習によって,被相続人の指定もなく慣習によっても明らかでない場合には,家庭裁判所が諸事情を考慮して指定します(民法897条)。

2 祭祀主宰者の任務
祭祀財産の承継については,承認や放棄の制度はありません。つまり,祭祀主宰者に指定された場合,法律上当然に祭祀財産を承継するのであって,祭祀主宰者になることを拒んだり,祭祀財産の承継を辞退することはできません。
しかし,祭祀主宰者に指定されたからといっても,祭祀財産を保管・管理し続ける義務や,祭祀行為を執り行う義務を負うわけではありません。承継者は,自らが承継した祭祀財産を自由に処分でき,これに対して相続人が反対することはできないとされています。

3 ご質問の場合
ご質問の事情では,祭祀財産の所有者であるお兄さんの指定により,相談者が祭祀主宰者となります。上記のとおり,祭祀財産の承継を放棄することは できませんので,たとえ本意でないとしても,相談者はお兄さんの死亡と同時に当然に祭祀主宰者の地位についており,これを拒むことはできません。
もっとも,現にアメリカに住み,帰国予定もない以上,今後の祭祀財産の管理は現実的に困難でしょう。上記のとおり,祭祀主宰者は祭祀財産を自由に 処分できますし,祭祀行為を行う義務も課せられていません。負担のない方法で今後の祭祀財産の管理処分方法を検討されれば良いと思われます。

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