1 不動産の価格が問題となるケース
このケースでは、依頼者らが居住を開始したときと比較して、家の価値が大変高騰していました。
不動産をある相続人が取得し、不動産を取得した相続人が他の相続人に対して代わりに金銭を支払う場合(これを「代償分割」といいます)、不動産を取得する相続人は他の相続人にいくら支払うかを計算しますが、その際、不動産の評価額をいくらにするかが争いになります。
通常、遺産分割における不動産の評価額は、遺産分割時点でいくらなら売却可能かという「時価」を評価額とします。このケースでは、当方が不動産を取得し、その代償金として「時価」×弟の法定相続分の4分の1相当額を弟に支払うとなると、相当高額となるケースでした。
そのため、なるべく弟に支払う金額を下げるように法的主張を組み立てる必要がありました。
2 「寄与分」について
このケースでは、家を購入する際に、名義は100パーセント被相続人である父親となっていましたが、依頼者が頭金として500万円を出し、その後もローンの返済として、毎月10万円を父親に渡していましたので、頭金と毎月渡していたローンの返済額相当額を依頼者の「寄与分」として主張することにしました。
頭金については父親に対する送金が振込伝票で立証できました。
しかし、毎月のローンの支払いは父親に対する手渡しであったため、依頼者の毎月の出金がわかる預金通帳及び母親が毎月つけていた家計簿を家の購入時から父親が亡くなるまでの期間を収集して整理する必要がありました。
こうした入念な準備をしたうえで、依頼者の代理人として、弟と交渉をし、先ほど述べたような当方の寄与分を前提として、不動産は依頼者が単独で取得することとし、時価の4分の1相当額よりも低い金額を代償金として支払うことを提案しました。
そうしたところ、当方に証拠があったことが決め手となったのか、当方の希望に近い内容で弟と和解を成立させることが出来ました。