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寄与分の証明が問題となった遺産分割の事例

寄与分の証明が問題となった遺産分割の事例

私の妻と私の両親は二世帯住宅に同居しています。同居している家は、私の家族と私の両親が同居するときに購入しました。家の名義は父で、家のローンは父が債務者となっています。購入時に私は頭金として500万円を父に渡しました。父もいくらか頭金を出したと思います。毎月のローンは、父が支払っていましたが、私も毎月10万円をローンの補助として父に渡していました。父と母の子は私だけではなく、弟もいます。このたび父が亡くなりました。父の遺産は、家(土地と建物)と預貯金、負債は家のローンです。遺言を残していませんでしたが、預貯金は老後の生活費として母が取得して欲しいそして、家は同居している母と私に取得して欲しいと常々私にも弟にも言っていました。遺産分割の話し合いが始まり、私と母は弟に対して、父の意向になるべく沿うように、「預貯金は母が取得、家は母か若しくは私が取得、その代わりに家のローンは母か私が引き継ぐ、弟には代償金として相当額を支払う」という提案をしました。しかし、弟は、話をするたびに、毎回違うことを言うようになり、弟はどうしたいのかが、分からなくなりました。そのようなこともあり、弟と話をするのが難しい状況です。私としては、遺産である自宅には、私の家族も母も住んでいますので、何とか家は父の意向どおり私や母が取得できるように話を持っていきたいと思っています。私と母はどうすればいいでしょうか。

事件の進行

1 不動産の価格が問題となるケース

このケースでは、依頼者らが居住を開始したときと比較して、家の価値が大変高騰していました。
不動産をある相続人が取得し、不動産を取得した相続人が他の相続人に対して代わりに金銭を支払う場合(これを「代償分割」といいます)、不動産を取得する相続人は他の相続人にいくら支払うかを計算しますが、その際、不動産の評価額をいくらにするかが争いになります。
通常、遺産分割における不動産の評価額は、遺産分割時点でいくらなら売却可能かという「時価」を評価額とします。このケースでは、当方が不動産を取得し、その代償金として「時価」×弟の法定相続分の4分の1相当額を弟に支払うとなると、相当高額となるケースでした。
そのため、なるべく弟に支払う金額を下げるように法的主張を組み立てる必要がありました。

2 「寄与分」について

このケースでは、家を購入する際に、名義は100パーセント被相続人である父親となっていましたが、依頼者が頭金として500万円を出し、その後もローンの返済として、毎月10万円を父親に渡していましたので、頭金と毎月渡していたローンの返済額相当額を依頼者の「寄与分」として主張することにしました。
頭金については父親に対する送金が振込伝票で立証できました。
しかし、毎月のローンの支払いは父親に対する手渡しであったため、依頼者の毎月の出金がわかる預金通帳及び母親が毎月つけていた家計簿を家の購入時から父親が亡くなるまでの期間を収集して整理する必要がありました。
こうした入念な準備をしたうえで、依頼者の代理人として、弟と交渉をし、先ほど述べたような当方の寄与分を前提として、不動産は依頼者が単独で取得することとし、時価の4分の1相当額よりも低い金額を代償金として支払うことを提案しました。
そうしたところ、当方に証拠があったことが決め手となったのか、当方の希望に近い内容で弟と和解を成立させることが出来ました。

弁護士からのコメント

このケースでは、父親の意向が生前からはっきりしていたとのことでしたので、できれば遺言を残しておくべきだったと思います。
被相続人が生前から周囲の人に意向を伝えていたとしても、遺言がなければ、原則として法定相続分どおりに遺産分割をすることになるからです。
また、「寄与分」については、場合によっては何十年の前の事実関係が問題になることも少なくありません。
今回のケースでは、古い振込明細や家計簿が残っていたため、ある程度寄与分を立証することが出来ましたが、そのような証拠がまったくないケースでは立証に苦戦することが多いというのが我々弁護士の実感です。

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