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当相談所の解決事例example of the solutions

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多額の遺産について複雑な遺言を作成した事例

多額の遺産について複雑な遺言を作成した事例

ある地方都市で不動産業を営んでいますが、夫婦共々先代から受け継いだ資産がかなりあり、おかげさまで私どもの代でも事業は順調に拡大しています。そろそろ自分の亡くなった後のことをも考えなければならない時期になったため、遺言を作成したいと思っています。 ただ、私が先に亡くなった場合には妻に全財産を相続させたいのですが、その前に妻が亡くなってしまっていた場合には、子どもたちに相続させたいのです。そのような、仮定的というか予備的な遺言というのは作成可能なのでしょうか。 また、実は子どもたちのうち1人が、成人後音信不通となってしまっています。遺言ではその子には一切遺産を与えないつもりなのですが、そのような遺言を作った場合、何かトラブルは起こらないでしょうか。

事件の進行

▼ 本件は地方都市在住の資産家のご夫婦からのご相談でした。地元の弁護士さんには相談が出来ないということで、わざわざこちらまで相談に来られたのです。
 ご相談があった「自分が妻より先に亡くなった場合には妻に全遺産を相続させるが、万が一妻が先に亡くなっていた場合には子どもたちに相続させる」という遺言は「予備的遺言」といいまして、作成が可能です。
 もちろん、そのような複雑な遺言ではなく、状況が変化した時点(本件では奥様が先に亡くなった時点)で再度遺言を作成し直してもよいのですが、その時点において、ご本人に遺言を作成できる能力がなくなってしまっている場合もあります。
 そのような場合に備えて作成するのが予備的遺言なのです。
 本件では、ご夫婦共にそのような予備的遺言を作成したいというご意向でした。
▼ さらに、本件では相続人の1人が行方不明になってしまっているという特殊事情がありました。
 行方不明の相続人に遺産を与えないという遺言はもちろん作成可能なのですが、もしその相続人が後から出て来た場合には遺留分減殺請求がされる可能性があります。そのため、遺言もそれに備えた内容にする必要がありました。
 具体的には、「遺留分減殺請求の対象を特定の預貯金とし、後は影響が少ない財産から順番に減殺請求の対象とする」という内容にしたのです。
▼ 本件ではご夫婦共々資産家ということで、財産の種類や額もかなりありました。
 しかも、ご夫婦それぞれがクロスするような内容の予備的遺言を作成するご意向を持っていましたので、遺言書は通常のものよりもかなり分厚くなり、かつ作成に要する時間やチェックにかかる手間も相当でした。
 しかし、その甲斐あってご夫婦が希望されていた内容を忠実に実行できるような遺言書を作成することが出来ました。
 

弁護士からのコメント

遺言は作らないより作った方がもちろんいいのですが、遺言者の意思を十分に反映させた遺言でなければ、むしろ紛争の種になることもあります。
本件では相当複雑な遺言となりましたが、1つ1つ遺言者の方の意思を確認しながら作成作業を進めていきました。
当初相談に来られた時点では、暗くなりがちだった依頼者の方の表情が、遺言が完成した時点でとても晴れ晴れしていたのが非常に印象的でした。
なお、この件では、遺言書が完成した段階で、相続人であるお子様たち全員を遺言者の方が集め、その場で遺言内容について遺言者ご本人と弁護士が詳細に説明しました。
遺言の内容や、そのような遺言を作成した意図について、子どもたちにきちんと伝えておきたい、そうすることで子どもたちの間で争いが生じることを避けることができるはずである、という遺言者の方の強い希望があったためです。
そのような意図が通じたのでしょう、お子様方は遺言者の言葉に熱心に耳を傾け、その説明に完全に納得していました。

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