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特に遺言もなく、遺産分割協議も成立していないのですが、遺産に含まれる銀行預金の払い戻し請求はできますか

特に遺言もなく、遺産分割協議も成立していないのですが、遺産に含まれる銀行預金の払い戻し請求はできますか

Q

遺産の中に銀行預金があるのですが、特に遺言なく相続が開始し、遺産分割協議も成立していない場合、法定相続分に従って各相続人が銀行に払戻を請求できるのでしょうか。

A

はい、法律的には可能です。
判例は,一貫して金銭債権は分割債権であり,相続開始と共に法律上当然に分割され,各相続人はその相続分に応じた権利を承継するという見解をとっています(最判昭和29年4月8日,同平成16年4月20日)

この見解に従うと、

[1] 各相続人は遺産分割協議を経なくても、自らの法定相続分にしたがって銀行に払戻請求が出来ることになりますし、
[2] そもそも遺産分割の対象とならないことになります。

しかし、[1]に関しては、金融機関は相続人全員の同意書を要求しますので、実務上は相続人の一部が法定相続分の払戻を受けることは出来ません。
これは、金融機関が相続人間の紛争に巻き込まれることを回避するためです。もっとも、かかる取扱は明らかに上記最高裁判決に反しますので、仮に相続人の一人が、法定相続分にしたがった払戻請求訴訟を裁判所に提起した場合には、相続人勝訴判決が出ると思われます。
次に、[2]に関しては、実際の遺産分割協議においては、金銭債権も含めて分割した方が公平な結果になる場合が多々あることから、実務上は、相続人全員が金銭債権を遺産分割の対象とすることに同意した場合には分割の対象とすることが出来るとされています。
なお、遺産に属する普通預貯金について共同相続人の1人が法定相続分の払戻を求めた裁判において、裁判所は以下のように述べて共同相続人の請求を認めました(東京地方裁判所平成18年7月14日判決) 被相続人が有していた預貯金払戻請求権は可分債権と解されるから、各共同相続人は、その法定相続分に応じて、権利を承継したものとして、その払戻請求権を 行使できる。被告は本件預金に関する遺産分割協議が成立する可能性が存すると主張するが、すでに共同相続人の一人である原告が本件払戻請求の訴訟を提起し ているのだから、本件各預金に関して遺産分割協議が成立する可能性があるとはいえない。
また、相続開始後、共同相続人間における遺産分割協議が成立する前においては、金融機関の実務として、共同相続人全員の同意に基づいて、共同相続人全員に 対して一括して預金の払戻を行うという商慣習は存しないし、顧客であった被相続人がかかる慣行に従う意思を有していたとは言えない。

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