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遺産分割調停とは?具体的な手続きの流れを解説

遺産分割調停とは?具体的な手続きの流れを解説

Q

父が亡くなり,兄弟間で遺産分割について争いが起きています。
とうとう兄から遺産分割調停を申し立てられ,裁判所に呼び出されました。初めてのことで戸惑っています。遺産分割調停とはどのように進められるのですか。

A

1 遺産分割調停
 遺産分割は相続人間の自由な協議で進めることができますが,相続は遺産の範囲,評価,寄与分,特別受益といった法的に難しい論点も含む問題であるうえ,時には相続人間の心情的な軋轢が円滑な話し合いを妨げることもあります。そこで,当事者間の話し合いがまとまらず遺産分割協議が整わない場合には,家庭裁判所に調停を申し立てることができます。これが「遺産分割調停」です(家事事件手続法244条)。
 調停は,非公開の手続きで2名の調停委員と裁判官である家事審判官で構成される調停委員会の関与により,当事者間の話し合いによる合意を目指す手続きです。なお,家庭裁判所が取り扱う家事事件の多くは,審判(裁判)の前に必ず調停を経なければならないという調停前置主義を採用している場合が多いのですが(例えば離婚事件),遺産分割事件に調停前置主義は採られていません。したがって,遺産分割協議が整わない場合には調停を経ることなく遺産分割審判を求めることができます。
もっとも,遺産分割は性質上,相続人間の合意を重視すべきであるという観点から,家庭裁判所は調停を経ずして申し立てられた遺産分割審判を,職権で調停に付することができます(同法247条)。
 具体的な調停の流れは次の通りです。

2 遺産分割調停の流れ
(1)遺産分割調停の申立方法
 遺産分割調停の申立先は,相手方の住所地の管轄家庭裁判所,または当事者の合意で定めた家庭裁判所です(同法245条)。また,上記のとおり,遺産分割手続きは共同相続人全員が関与しなければ無効ですので,共同相続人全員を申立人か相手方のいずれかに入れなければなりません。
 申し立ては口頭でもできますが,実際には遺産分割調停を申し立てる書面(遺産分割調停申立書)に必要事項を記載・提出して申し立てることが一般的です。申立てには各種書面(被相続人の除籍謄本,相続人の戸籍謄本・住民票,遺産目録,登記簿謄本,固定資産評価証明書,残高証明書等,遺言書等事案によって異なる)が必要ですので,提出時には家庭裁判所に確認するか弁護士等の専門家に相談されるのがよいでしょう。
(2)遺産分割調停の進行
調停の申立がなされると,家庭裁判所は申立人と相手方とを同一期日に呼び出します。期日においては,調停委員が当事者双方を別々・交互に調停室に呼び,提出された申立書や添付資料を見つつ双方の言い分を聞いて,妥当な解決案による合意形成を目指します。
このように,調停は裁判ではなく,あくまで裁判所を利用した当事者間の話し合い手続きです。調停における調停委員の指導や助言に強制力はなく当事者の合意が優先されます。また,相続人のうち一人でも解決案に同意しなければ調停を成立させることはできません。
(3)調停の成立
 調停で当事者間の合意が形成できた場合,裁判所が合意内容を記載した書面(調停調書)を作成することで調停成立とします(同法268条)。調停調書には確定判決同様の強い効力があります。よって,金銭支払い,登記義務の履行といった具体的な義務を定めた調停調書の記載内容を実現しない当事者に対しては調停調書を根拠として法的に履行を強制する手続き(強制執行)が可能です。
(4)調停の不成立
何度か調停期日を経ても合意が得られる見込みがない場合には調停は不成立となり(「不調」)終了します(同法272条)。遺産分割調停が不調に終わると審判手続きへ移行します。審判への移行は法律上当然に行われますので,新たな申立ては不要です。
 なお,遺産分割の審判に関する詳細は1.026をご覧ください。

「参考文献」
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
仙台家庭裁判所『家庭裁判所における遺産分割手続Q&A』

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