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遺産分割を行うための3つの方法(遺産分割協議・調停・審判)

遺産分割を行うための3つの方法(遺産分割協議・調停・審判)

Q

父が亡くなり,母と5人の息子が相続人です。父の遺産は,預貯金,不動産,多数の有価証券等があり多額に上るうえ,兄弟が互いに不仲で話がまとまりそうにありません。私は長男ですが,相続の知識もなく今後の手続きについて悩んでいます。遺産分割を進めるにはどのような方法があるのでしょうか。

A

 遺産分割を進めるためには次の3つの手続きがあります。方法等をご説明します。

1 遺産分割協議

相続が開始した場合,まず,共同相続人間で遺産分割に関する話し合いを行い,各相続人の具体的な取得物,取得割合等を決します。このように,裁判所外で相続人間で行われる遺産分割のための話し合いを「遺産分割協議」といいます。遺産分割は相続人全員の関与が必要不可欠であり,相続人の一部を除外して行われた遺産分割協議は無効です(後述する調停,審判も同様です)。
遺産分割協議がまとまれば,通常は遺産分割協議書という文書を作成し,当事者全員が押印して,遺産分割協議成立の証とするのが一般的です。

2 遺産分割調停

 もっとも,相続は遺産の範囲,評価,寄与分,特別受益といった法的に難しい論点も含む問題であるうえ,時には相続人間の心情的な軋轢が円滑な話し合いを妨げることもあります。そこで,当事者間の話し合いがまとまらず遺産分割協議が整わない場合には,家庭裁判所に調停を申し立てることができます。これが「遺産分割調停」です(家事事件手続法244条)。
 調停は,非公開の手続きで2名の調停委員と裁判官である家事審判官で構成される調停委員会の関与により,当事者間の話し合いによる合意を目指す手続きです。なお,家庭裁判所が取り扱う家事事件の多くは,審判(裁判)の前に必ず調停を経なければならないという調停前置主義を採用している場合が多いのですが(例えば離婚事件),遺産分割事件に調停前置主義は採られていません。したがって,遺産分割協議が整わない場合には調停を経ることなく遺産分割審判を求めることができます。
もっとも,遺産分割は性質上,相続人間の合意を重視すべきであるという観点から,家庭裁判所は調停を経ずして申し立てられた遺産分割審判を,職権で調停に付することができます(同法247条)。
 なお,遺産分割調停に関する詳細な流れは,1.027にてご説明しています。

3 遺産分割審判

審判とは,家事審判官が,当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果等様々な資料に基づいて具体的な遺産分割内容を決定する手続きです。
遺産分割審判の申立先は,調停を経ずに当初から遺産分割審判を求める場合は被相続人の最後の住所地,または相続開始地(死亡時の居住地)の管轄家庭裁判所です(同法191条)。審判に調停が先行した場合は調停を担った裁判所に審判が係属します(同法272条)。
 審判に不満がある場合,即時抗告により不服を申し立てることができます(同法85,198条)。即時抗告は審判告知を受けた日の翌日から2週間以内にする必要があり(同法86条,民140条)この期間を経過すると審判が確定します(同法74条)。
確定した審判には調停調書と同じく判決同様の効力があり,強制執行の根拠となります。

「参考文献」
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
仙台家庭裁判所『家庭裁判所における遺産分割手続Q&A』

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