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特別縁故者に対する相続財産の分与

特別縁故者に対する相続財産の分与

Q

亡夫の父(舅)と長年同居し,ここ10年は私一人で介護してきましたがこのたび舅が死亡しました。舅は一人っ子で,亡夫以外に子はおらず,妻も両親も既に他界してます。なお,亡夫に子はいません。私に舅の相続権はありませんか。仮に相続権がない場合,ほかに舅の財産を分けてもらう方法はありませんか。

A

1 被相続人の子の妻の相続権
被相続人の子は第一順位の相続人となりますが,子の配偶者は相続人の地位を有していません。したがって,ご質問のケースでも,被相続人(舅)の子の妻であるご質問者は,被相続人の相続人ではないため,相続権を主張して遺産を受け取ることはできません。
なお,ご質問の事情からすると,舅には相続権のある親族・配偶者が一人も存在しないため,相続人の存在が明らかでない(相続人不存在が疑われる)ケースです。

2 特別縁故者による財産分与請求
相続人が不存在の場合,被相続人に属する財産は最終的に国庫に帰属します(民法959条)。しかし,被相続人の生前に献身的な世話をし生活を支えた人(特別縁故者)があるならば,その人に遺産を分配することが被相続人の意志および一般の法感情に沿うと考えられます。そこで,法は,特別縁故者の保護と被相続人の意思尊重を趣旨として,
①被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の配偶者,事実上の養子,同居の子の妻等)
②被相続人の療養看護に努めた者(献身的な世話をした隣人等)
③その他被相続人と特別の縁故があった者(生活資金・事業資金を援助してきた者等)
は,家庭裁判所に対し,遺産の分与を請求できるとしました(民法958条の3)。

3 分与請求の方法
相続人の存在が明らかでない場合,相続財産は裁判所が選任する相続財産管理人によって管理されます(民法952条)。相続財産管理人は,相続債権者および受遺者に対して弁済するとともに,相続人捜索の公告を行い(民法958条),公告期間内に相続人が現れない場合に初めて相続人の不存在が確定します。そして,相続人の不存在が確定し,弁済後の残余財産がある場合には,特別縁故者は相続人捜索の公告期間満了後3か月以内に家庭裁判所に分与を申し立てることができます。
なお,特別縁故者の財産分与請求は,あくまで相続人が不存在の場合で,かつ,上記弁済後に残余財産がある場合に限って認められるものです。したがって,これらの手続きにおいて相続人が発見された場合,または,弁済により残余財産が存しない場合には,特別縁故者として財産の分与を求めることはできません。

4 家庭裁判所による判断
特別縁故者による財産分与請求がなされても,この請求により当然に財産分与がなされるわけではありません。裁判所は申立人の主張する縁故関係の内容・程度,療養看護の期間,残余財産の状況等を総合考慮して請求の当否を判断します。分与を認めるか否か,認めるとしてどの財産をどの程度分与するかは,すべて裁判所の裁量によります。

5 結論
 ご質問者は,舅の相続人にはあたらず相続権の主張はできません。
しかし,舅と長年同居し10年にもわたって一人で介護してきた点で特別縁故者に該当し,他に相続人がおらず,弁済後の残余財産がある場合に相続財産の全部または一部を受け取ることができる可能性が高いと思われます。相続財産管理人による相続人捜索の公告期間満了後3か月以内に家庭裁判所に特別縁故者としての財産分与の申し立てを行うことをお勧めします。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
高岡信男『相続・遺言の法律相談』学陽書房
安達敏男・浦岡由美子・國塚道和『Q&A相続・遺留分の法律と実務』日本加除出版

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