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遺留分とは

遺留分とは

Q

夫が亡くなり,妻の私が唯一の相続人です。遺産を調べると,夫は財産のほとんどを亡くなる直前に寄付したり知人に贈与したりしており,わずかな預金しか残っていないことがわかりました。私も高齢で,夫の遺産がなければ生活に困るのですが,何か方法はありませんか。

A

1 遺留分とは
 ご質問のように,被相続人が生前に財産を処分してしまったために遺族の相続分が減少したような場合,一定の条件が整えば,遺留分制度によって財産の一部を取り返すことができます。
遺留分とは,被相続人が有していた財産のうち,法律上その取得が一定の相続人に留保されており被相続人の自由な処分(贈与・遺贈)に対して制限が加えられている持分を指します。遺留分を有する相続人は,被相続人から贈与や遺贈を受けた人に対して自己の遺留分を取り戻したり引き渡しを拒む権利があるのです。
 遺留分が請求できるのは相続人のうち,配偶者,子等の直系卑属,父母等の直系尊属に限られ,兄弟姉妹やその子に遺留分はありません(民法1028条)。
 遺留分は,直系尊属のみが相続人である場合には法定相続割合の3分の1,それ以外の場合には法定相続割合の2分の1です(民法1028条,1044条,900条,901条)。
 ご質問のケースのように,夫が死亡して妻が唯一のが相続人である場合,妻の法定相続割合である100%に2分の1を乗じた分,つまり2分の1が妻の遺留分割合となります。

2 遺留分算定の基礎となる財産
 具体的に遺留分として取得できる財産は,遺留分算定の基礎となる財産に,上記のとおり算出された遺留分割合を乗じて算定します。遺留分算定の基礎となる財産とは,被相続人が相続開始時に有した積極財産(プラスの財産)の価額から債務(マイナスの財産)得全額を控除し,被相続人が贈与した財産の価額を加えることにより算出されます(民法1029条)。もっとも,被相続人が贈与した財産のすべてが遺留分算定の基礎に加算されるわけではなく,次の条件をみたす贈与に限られています。
ア 相続開始前の1年間にされた贈与(民法1030条)
イ 遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与(民法1030条)
ウ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
エ 婚姻・養子縁組費用・生計の資本としての相続人への贈与(民法1044条,903条1項)

3 ご質問について
 ご質問では,夫が亡くなる直前に,財産を寄付や贈与によって減らしてしまい,残された妻の受け取る遺産が大きく減少したという事情があります。このような場合,夫が生前に行った寄付や贈与が,上記のケースにあたれば,遺留分算定の基礎財産に加えて遺留分を計算し,その金額を寄付や贈与を受けた相手に請求することができます。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院

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