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特別受益の持戻免除の意思表示とは何ですか

特別受益の持戻免除の意思表示とは何ですか

Q

私は、長年連れ添ってきた夫を亡くしました。

それほど豊かな暮らしをしてきたわけではありませんが、夫婦仲もとても良くお互いに支え合って生きてきました。子供は2人おりますが、いずれも疎遠でほとんど行き来がありません。夫が存命中に、「私が亡くなったら残してあげられる財産はこの家だけだから、生前におまえの名義にしておこう」と言われ、自宅不動産の贈与を受けました。

夫が亡くなった時点で、遺産は預貯金しかありませんでした。

しかし、子供らからは、私が贈与を受けた自宅は「特別受益」にあたる、と主張されています。夫からは、私の老後の生活のために、ということで贈与を受けたにもかかわらず、それが特別受益ということになれば、夫が残した預貯金は全て子どもたちにわたってしまい、私の手元には残りません。それでは今後到底生活をしていくことができないのですが、どうしたら良いでしょうか。

A

特別受益については、被相続人が「特別受益として扱わなくて良い」つまり、持戻しをしなくてもよいという意思表示をした場合には、特別受益として扱わなくてもよいことになっています(民法903条3項)。

これを「持戻免除の意思表示」と言います。

この持戻免除の意思表示は、贈与と同時ではなくてもよいし、明示でも黙示でも構わないとされています。

したがって、その点に関する被相続人の意思が明らかとなる書面があれば当然持戻免除の意思表示は認められますし、たとえば、長年連れ添ってきた妻に、その長年にわたる妻としての貢献に報い、その老後の生活の安定を図るために行った贈与などについては、暗黙のうちに持戻免除の意思表示をしたものと認められる ことがあります。その際には、被相続人と受益者の関係、特別受益の対象である財産の価格、受益者の生活状況、相続人間の公平などが考慮されることになると 思われます。

本問においては、あなたは長年被相続人と連れ添い、生前贈与を受けた自宅の他には老後の生活を支える資産も住居もないということですので、被相続人の黙示 の持戻免除の意思表示があり、自宅の贈与については特別受益に当たらない、という主張をすることが可能ではないかと思われます。ただし、民法903条3項にありますように、他の相続人の遺留分を侵害することは出来ませんから、その点について注意は必要です。

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